



現状維持では選択肢を狭めてしまう!
就業年齢層人口や大学生の就職率など、人材募集に関するあらゆる指標が過去最高を記録(総務省・文部科学省・厚生労働省の白書・資料より)するなど人材確保は中小製造業にとって厳しくなっており、人手不足倒産も増えています(帝国データバンク調査資料より)。
また、製造業は原材料や燃料をたくさん使用する業種であり、原材料費が上昇すると利益率を圧迫します。例えば4大汎用プラスチックのうち日本全体で最も使用量が多いポリエチレンは2020年比で54.7%価格が上昇、自動車での使用量が多いポリプロピレンも49.3%上昇しています(埼玉県「主要原材料費等の推移資料」より)。世界各地で起きている紛争や分断や疫病対策の影響によって日本国内でも材料費や燃料費の高騰が今も進んでいます。
さらに、2027年ごろから始まるCO₂排出量の開示義務などコンプラ強化の浸透や、2035年までにScope1・Scope2の実質カーボンニュートラルの実現、さらに2050年にはScope3も含めた実質カーボンニュートラルの目標が掲げられ、石油の掘削もゼロにする方針が日本を含む各国の政府から示されています。
特に金融庁が発表した、株式市場に上場している大企業すべてに開示を義務づける方針によってサプライチェーン全体が対応する必要がでてきました。まずはトヨタ自動車や日立製作所など時価総額3兆円以上の約70社を対象に27年3月期から強制適用し、翌年に1兆円以上の約180社、2年後に5000億円以上の約300社と広げ、最終的にプライム市場上場全社(約1600社)まで段階的に適用する計画です。
この計画が中小企業といえども無関係ではいられない点は、指針となっているSSBJ基準がサプライチェーン全体で発生する間接的な温室効果ガス排出量を含む『Scope3』の開示まで義務化していることです。この基準により大企業との直接取引がなくても、サプライチェーン(SC)のトップにいる親企業が上場しているなら孫請け以下の中小企業といえども温室効果ガス(GHG)排出量を集計する業務負担増を避けて通れなくなります。具体的には、見積書に1個あたりの排出量を記載することになるでしょうし、その多寡による競争が起きるでしょう。継続的な取引をするなら工場の総排出量についても定期報告を求められる見込みです。
もちろん、これらは今後の世界情勢や政府の方針によって変わることもありますが、今の流れのままなら21世紀・第二四半期の経営環境として受け容れていかざるを得ません。業種によっては、もうすぐ排出量報告のためにカーボンフットプリントの集計を始める時期になりますが、そうなれば集計の知見をもった技術者も確保が必要です。

また、2025年7月に経済産業省が自動車、家電、容器包装を再生プラスチックの使用義務化の対象製品として指定する方針を示しました。これに伴い再生プラを使用しても高い品質を保つ技術の開発やノウハウの蓄積がものづくり企業であれば規模にかかわらず必要になります。
また、労働人口が減少する未来を見据えてDXやIoTで生産性を向上させる企業が増えエンジニアの取り合いも始まっています。これらはどの問題も対応が急務です。
こんなとき、現状維持すると選択肢を狭めてしまいます。
これまでは“ピンチをチャンスにしよう”と言われてきましたが、21世紀の第二四半期からは、むしろ“チャンスはピンチのときにしか来ない”と考えるべきでしょう。
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